「「ピクニック?」」
ソファに座って、ネイルをしている愛麗とその横で、
CDを整理しているジルガは揃ってリリアスの言葉をおうむ返しした。
「そう!お弁当持っていくの!行こうよ〜、ね?」
リリアスは2人をキラキラとした目で見つめる。
「いーじゃん!たまにはみんなで出かけようよ、ジルガ。」
そう賛成したのは、愛麗だ。
持っていたネイル用の筆を止め、ジルガに同意を求めるが…
「俺はいい。」
とあっけなく拒否された。
そして、何もなかったかのように無造作に机上に置かれているCDをまた手に取り始めた。
「え〜、なんで〜!?」
ほっぺたを膨らませ、いかにも不機嫌そうにリリアスは言った。
「めんどくさいから。」
ジルガはそう一言だけ言い放つ。
リリアスには目も向けず、50音順にCDをケースに入れていく。
「ノリ悪いわよ?いいじゃない、4人で揃って出かけるなんて、
そんなにあるもんじゃないんだし。」
愛麗も説得してみるが、聞いている素振りすら見せない。
「ちょっと、聞いてるの?秋だし紅葉とか……ってコレ!!」
愛麗はジルガが手にした1枚のCDを奪うように取った。
「なんだよ!?」
さすがのジルガも自分のやっている事を邪魔されて、声を荒立たせる。
「これ、アタシのCD!ちょっと前になくなったと思ったら、
アンタが持ってたの!?」
「俺のだ。愛麗に貸してたんだろ、俺が。いつまでたっても返さないから、
この部屋のラジカセの中見たらあった。」
「そんなわけ…………ある。」
さっきまで威勢がよかった愛麗は、急に声が小さくなり、ジルガから目をそらした。
そして、素直にジルガにCDを返した。
「ね〜…ピクニックは?」
床に座り込み、2人のやり取りをつまらなそうに見ていたリリアスが口を開いた。
「…あ、そうそう!ジルガ、ピクニック行こ!」
気を取り直し、愛麗はもう1度説得してみる。
「俺はいい。」
「いいじゃん、いいじゃん!リリィは4人で行きたいの!」
「そうよ。4人で行かなきゃ、意味ないのよ。」
「ジルガ、行こうよ〜。楽しいよ?4人じゃなきゃ...」
「オイッ!!!!」
不意にドアの方から大声が聞こえ、リリアスの言葉は遮られた。
当然、3人は声のする方を向いた。
そこには押し付けられた買い物から帰ってきた瑛亮が、眉間にしわを寄せて立っていた。
両手にはビニール袋を下げている。
「あ、瑛亮。おかえりぃ〜♪」
そんな瑛亮とは対照的にリリアスはのんきだ。
「おかえりじゃねぇよ!!」
「何怒ってんのよ?あ、買ってきたアイスちょうだい。アタシ、チョコチップね。」
愛麗はソファに座ったまま、瑛亮に手を伸ばして催促する。
「うっせぇよ!何で俺抜きで、話進んでんだ!?さっきから4人って、
俺は何も聞いてねぇぞ!」
その場に袋を雑に置くと瑛亮は、ガミガミと文句を言い始める。
…が、誰も聞いていない。
「やったぁ!リリィ、いちご味がいい〜♪」
“アイス”という言葉に反応したリリアスは袋を物色し始める。
「聞けよ!」
リリアスに向かって瑛亮は怒鳴ってみるが、無視…というか、聞こえていない。
「愛ちゃん、チョコチップどーぞ。」
アイスと使い捨てスプーンを愛麗に手渡す。
「リリィ、ありがとっ」
「おい、聞けって言ってんだろ!?」
「ジルガは?」
「俺はラムレーズン」
「らむれーずん?えーと…あ、あったよ!はい、ラムネ何とか。」
「俺が話してんだろ、リリィ!」
アイスを配り終えたリリアスは自分のアイスを袋から出し、
ようやく瑛亮の声に反応した。
「あ、ごめんね。瑛亮は何がいい?けど、チョコ味しか残ってないよ。」
リリアスは笑顔で見上げる。
「チョコ味は俺のだ。そうじゃなくて、俺抜きで話を進めんなって言ってんだろ!?」
「あー、瑛亮。その前に買ってきた物、冷蔵庫入れといてね。」
スプーンをくわえた愛麗が手をヒラヒラさせて瑛亮に指示する。
「何で俺が...」
「じゃ、もし痛んじゃったら、瑛亮買いなおしてきてよね。自腹で!!」
「……やればいいんだろ!?」
負け惜しみとでも言うべきだろうか、瑛亮は不機嫌極まりない顔で袋を持って台所へ行った。
いつもの事ながら、こういう時は愛麗の方が上手だ。
すぐに戻ってきた瑛亮はソファに座っている3人の前に机を挟んで立つ。
どうやら、アイスは冷蔵庫に入れておいたらしい。
その後の事だか、言うまでもなく、そのアイスはリリアスの餌食となった。
机上には食べおわったアイスのカップが3つ並んでいる。
「…で、何が言いたいんだよ?」
瑛亮に最初に聞いたのはジルガだ。
横にはきっちりとCDが入れられているケースがいくつか積んである。
やる事がなくなり、暇潰し程度に瑛亮に話しかけたのだろう。
「4人でピクニックに行くんだったら、俺にも一言言え。」
「そう言うことか。じゃあ、俺の代わりに行けばいいだろ。」
興味なさそうに目をそらしながらジルガは言った。
「そうしゃねぇだろ!?お前の代わりになんかなんねぇよ!!」
何かと瑛亮は後先考えずに反発する。
「えぇ!?瑛亮も行かないの?」
眉を下げ、さっきのような叫ぶ高い声ではなく、悲しそうにリリアスは言った。
「面倒くせぇな…」
ボソッと一言つぶやくと、
「行くよ!けど、コイツの代わりにはならねぇって言ってるだけだ。」
と、瑛亮は続けた。
「だってよ、愛ちゃん。じゃ、4人で行けるね〜♪」
瑛亮の言葉を聞いた途端、さっきまでのくらい顔がパッと笑顔にもどった。
「よかったね、リリィ。アタシ、お弁当気合い入れて作るからね。」
「俺は行かないから。」
ノリノリの2人のテンションを急降下させるジルガの一言。
「冗談でしょ?行くわよね?ジジ〜」
愛麗はニヤッと怪しい笑みを浮かべた。
“ジジ”──
その言葉を聞いた途端、ジルガは全力で愛麗を睨み付けた。
リリアスと瑛亮はこの戦いを見守るしかなかった。
「行こうよ、ジジ?」
「その呼び方、やめろ」
「じゃ、行く?」
「行かない」
「じゃ、ずっとジジって呼ぶわよ?いいの、ジジ?」
「…わかった。わかったから、その呼び方、すぐにやめろ!」
結果、愛麗の勝利。
ジルガは不機嫌になり視線を窓に向けた。
「やったぁ!これで、4人で行けるね。」
リリアスはその場に立ち上がると、ピョンピョン跳ね上がる。
それを器用に躱し、愛麗は壁に貼ってあるカレンダーにたどり着くと
日曜日に『ピクニック♪』と書き込んだ。
「じゃ、今度の週末はピクニックに決定ね。」
ペンのキャップを閉めながら愛麗は振り返った。
若干1人、乗り気じゃない奴もいたが、みんなその日を待ち焦がれた。